正真正銘のロストバゲージに遭って、補償を申請した話

フライト欠航と補償にまつわる話に続く、旅のトラブルシリーズ。去年、荷物が行方不明になる正真正銘のロストバゲージ(ロスバゲ)に遭遇。これも記憶が薄れないうちにメモしておこう。
kurukkuu.hatenadiary.com

荷物が出てこない!

話はまた1年前の2016年1月まで遡る。日本への出張を終えてポーランドへと戻るときに事が起きた。羽田空港からロンドン・ヒースロー空港まではANA、さらにLOTポーランド航空とのコードシェア便に乗り継いでワルシャワ空港に飛ぶという旅程。

NH211         HND LHR 1140 1520
NH6721(LO280) LHR WAW 1750 2120

東京からは全部で3つの手荷物をワルシャワまでスルーチェックインしていた。上着や本、PC関連のアクセサリーなどを詰めたスーツケース1個、食料品満載のダンボール箱1個、それから仕事の資料や肌着、毛布などを入れたボストンバッグ1個。

スムーズに入国審査を通過し、バゲージクレームで荷物が出てくるのを待つ。ワルシャワショパン空港の3社あるハンドリング業者の中でも、LOTを担当している会社は優秀で、プライオリティタグが付いている荷物をきちんと優先して出してくれる。スーツケースとダンボールは早々と回収成功。なのに残りのボストンバッグが出てこない。そのうちに「Last Bag」というメッセージがディスプレイに表示され、カルーセルは止まってしまった。

バゲージカウンターへ

ワルシャワ空港には、税関前のバゲージクレームフロアにハンドリング業者別に分かれたオフィスが並んでいて、そこで荷物に関するトラブルを受け付けてくれる。私はカートを押しながら、LOTのロゴマークが掲示されているカウンターへと向かった。この時間は到着便も少なく、バゲージクレームのフロアはがらんとしている。ロスバゲに遭ったのはどうやら私1人のようだった。

受付の荷物が見当たらないことを告げると、以下の書類を出すように言われた。

  • eチケット
  • 搭乗券
  • バゲージクレームタグ

それから書類を手渡される。個人情報と連絡先、それから荷物の特徴を写真で分類したリストみたいなものが備え付けてあって、そこから一番近い見かけのバッグの番号と色を選ぶ。ボストンバッグの外見にぴったり合うサンプルは無かったから、念のため脇に「Boston bag」と文字でも添えておく。書類を記入している間に、携帯電話とトランシーバーで各地点のスタッフに連絡して、他のカルーセルやバックヤードに同じ外見の荷物が残っていないかどうか念のため確認してくれている様子。

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記入が終わると、その場で内容をデータベースに登録して、「Property Irregularity Report」という書類を発行してくれる。海外旅行保険を申請するにしても、航空会社に補償を請求するにしても、後々この書類はロスバゲの証拠として重要になってくる。

結局ボストンバッグは空港内に見当たらず、捜索の進展があり次第連絡してくれることになった。ロスバゲ自体初めて経験する私、がっかりしながら家に帰る。ボストンバッグに高価なものは入っていなかったが、衣類と仕事のメモを記したノートが数冊入っていた。本当だったらスーツケースに入れるはずだったのに、宅配便で空港に送った後だったため、取り急ぎ手元にあったボストンバッグに詰め込んだのだ。それがないと仕事ができないわけではないけれど、今までの記録が全部無くなってしまうのは痛い。

便りを待つ日々

ロスバゲに遭った荷物はWorldTracerという航空会社共通のデータベースに登録される。捜索の進捗がある毎にDBは更新され、web上でもチェックすることが可能だ。毎日アクセスしていたものの、残念ながら数日の間に情報が更新されることは無かった。

https://en.wikipedia.org/wiki/WorldTraceren.wikipedia.org

そして、肌着と日用品が無くなった荷物に入ったままだったので、街のショッピングモールのH&Mで一揃い購入。それからドラッグストアのRossmannで、ハブラシ、ハミガキ、シャンプー、コンディショナーなども調達。当座必要な日用品の購入費用については後で返還されるので、レシートは忘れずに取っておかないといけない。

集中捜索、始まる

ワルシャワに戻ってから、つまり荷物が消えてから5日が経った。今まで何にも音沙汰がないので、こちらからアクションを取ることにする。ここでロスバゲを受け持つのは、最後に荷物の輸送を引き受けた航空会社。私のケースではLOTポーランド航空になる。たいていの大手航空会社のwebサイトには荷物のトラブルについての案内があり、担当部署の連絡先もそこに書いてある。LOTの場合はメールアドレスがあったので、個人情報と「Property Irregularity Report」のレファレンス番号を添えてメールを送ってみることにした。
http://www.lot.com/pl/en/problems-with-baggagewww.lot.com

さほど待たないうちに返事があり、「集中捜索(Extensive tracing)を開始するから、「Baggage Inventory Form」という書類に詳細を記入して送ってほしい」とのこと。どこかで耳にした話によると、ロスバゲに遭っても荷物の9割以上は5日以内に発見されるのだそう。つまりそれ以上の期間が経つと荷物が発見される確率はガクンと減り、航空会社も本腰を入れて捜索する必要に迫られる。5日間経っても吉報のないこと。それが「集中捜索」を開始するトリガーになるのだろう。

早速「Baggage Inventory Form」に以下の内容を書いて、スキャンしたPDFをメールで送る。


  • 連絡先、フライト情報
  • バッグに関する情報(特徴、ブランド、価格、購入日、チェックインした空港、最後に目撃した場所など)
  • 中身に関する情報(特徴、ブランド、価格、購入日)

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その後も毎日WorldTracerで進展がないかを確認したものの、手がかりは何も得られなかった。

最終宣告

30日後、そのメールは突然やってきた。

残念ながら本日時点で荷物が見つからなかったことをご報告します。
あなたの書類は担当部署に転送され、補償の手続きを開始します。

半ばあきらめていたとはいえ、最終宣告を受けるとやっぱり気を落とすもの。その数日後にクレーム担当部署からのメールが届く。そこには「補償はモントリオール条約にしたがって、被害を証明できた金額の範囲内で支払われること。金額を証明する領収書やレシートを提出しなければならないこと。」が記載されていた。やれやれ、荷物が無くなったうえにここからまた一仕事ですか。でもこれをやらなければお金を取り戻すこともできないし、と重い腰を上げ、手元にレシートが残ってないか調べてみることにする。

交渉のはじまり

肌着のいくつかについてはMUJIユニクロのネット通販で買った記録があり、購入確認メールを提出すれば証明できそう。クレジットカードの利用明細を証拠として添えることもできる。

それに対して、1年前に買ったブランケットのレシートなんてもうどこかに捨ててしまって見つからない。ボストンバッグだって、奮発して買ったArtisan & Artistのバッグだったけれど、領収書の保管場所なんて思い出せないし。無いものは無い、といさぎよくあきらめて、以下の書類を準備した。


  • [購入記録あり] ネット通販の領収書 + クレジットカード明細書のコピー
  • [購入記録なし] webで現在の価格を調べて記入
  • [こちらで買った肌着&トイレタリー] レシートのコピー



提出は資料をスキャンして、メールで送ればOK。そして送るときに

まさか無くなるとは思ってなかったからレシートなんて保管してなかった。だけど考慮してもらえるとうれしいな。

とダメモトで一言付け加えておく。

数日経ってまた返事。今度は、「ごめん。資料が日本語で書いてあってよくわからない。悪いけど、英語で説明を付け加えてもらえる?」という依頼。(そんなの自分の会社の日本支社にやってもらえばいいんじゃないの?と)若干イラっとしながらも、明細書をスキャンしたPDFに英語のコメントを一つずつ付け加えていく作業を終え、すぐに返送する。その後も「Baggage Inventory Formと明細の値段が違うけど、どうして?」とか細かいツッコミが入ったりと、何度かやり取りをする羽目になった。

運命の結果発表

そして荷物が消えてからほぼ2か月が経った、2016年3月22日、ついに補償金額の確定について連絡が入る。

  • 明細のあるもの+当座しのぎで買った肌着&日用品は、明細の額面を100%補償します。
  • そして明細がないものについても自己申告の50%補償します。

さすがに明細がないものまで返金されると期待してなかったので、この通知は予想外の嬉しさだった。1年近く前に買ったバッグや毛布の代金が50%も返ってくるだから、十分御の字だ。ただ、一番の損失は仕事のメモ、それこそノート代が返ってきても何の足しにもならないのだから…。

受取方法は銀行振込が一般的な模様。ポーランド国内に銀行口座がある私は、航空会社のシステムにアクセスして自分の口座番号を登録。数日後にはもう振り込まれていた。

以上が私の初ロスバゲの顛末記。もう二度と起こらないことを願うばかり…。

ロスバゲから身を守るために
  • 荷物には名前と連絡先を書いたタグを付けておく。
  • 仕事の資料など取り返しのきかない大事なものは、機内持ち込みにする。
  • ロスバゲの評判のある空港での乗り継ぎはできるだけ避ける(今回はヒースロー空港)。
そして万が一起こっても泣き寝入りしないために
  • 海外旅行保険による補償が受けられるかまず確認。
  • 旅行保険が効かない時でも航空会社と粘り強く交渉。
  • 荷物の中に何が入っているか思い出せるようにしておく。
  • レシートはスキャンコピーでもいいからできるだけ保管しておく(ネット通販だとメールで控えが残っているので探しやすい)。

[Visited on: 2016/01/30-2016/03/22]
[Published on: 2017/03/20]