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フィンエアー欠航で、遅延補償を申請した話

事の発端

話は2016年の夏まで遡る。フィンランド西部を旅行していた私はレンタカーでヘルシンキに戻り、同じ日の飛行機でワルシャワへと帰るはずだったのに、フィンエアーの機材トラブルでフライトがキャンセルされて足止めをくってしまい、やむを得ずヘルシンキに1泊というアクシデントが起きた。そのときしたこと&受けた対応について、忘れないうちにメモ替わりに記しておきたかった。

なかなか出発しない

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17:20 ヘルシンキ発のフィンエアーAY743便。けれどもドアが閉まっても出発するそぶりを見せない。予定時刻をだいぶ過ぎたところで、メカニックが2人乗り込んできて操縦室のドアを開け、何やら作業をし始める。さらにアナウンスでテクニカルな問題が起きたことを告げる説明がある。30分ほどかかった後、19時ごろには再び滑走路へと動き出した。トゥルクから運転して疲れが溜まっていた私はようやく安堵して、これで短い休暇も終わり、明日から仕事かと、うとうと船を漕ぎ出した。zzz…。

着陸の衝撃で再び目が覚める。もうワルシャワに着いたのかな?でもいつもの見慣れた景色とは少し違う。滑走路の向こうに森が見える。ここはワルシャワじゃない。何が起きたのか、寝起きの頭では把握できなかった。誘導路に向かう飛行機の窓からターミナルの建物と「Helsinki Airport」の文字を見て、またヘルシンキに戻ってきたことだけは理解した。

ヘルシンキへまさかのUターン

操縦席から詳細な原因報告。「スポイラー*1の動作が不調で操縦に影響がある」とのことだった。後日Flightrader24で確認したところ、バルト海上で引き返してきたらしい。目的地まであと半分の地点までは飛んできていたのに…。代替機が手配されるのか、それとも欠航になるのか、機長の早口のアナウンスがよく聞き取れず、この時点ではわからなかった。時間はすでに20時半を周っていて、本来ワルシャワに着いている時間。

スポットに着いても機内でしばらく待たされた後、ようやくランプバスが来る。そのまま到着フロアに運ばれてきたので、「ああ、代替機の手配はもう付かないんだな」という事実を察する。こうなったら他社便への振り替えか、翌日の直行便で帰国か、どちらかの選択肢になるはず。でも時間はもう21時前、この時間に出発するフライトの大半はフィンランド国内線しかなく、ワルシャワへ今日中に帰るのは絶望的だろう。到着ロビーではキャンセルになった便の乗客は2階の乗り継ぎカウンターに進むように指示していた。案内通りに向かった25番ゲート前の乗り継ぎカウンターはもう長蛇の列。これだと1時間以上かかるかもしれない。この光景を見て困惑していた最中、スタッフが誰かに1階(2A出口)のバゲージクレームの窓口でも対応が可能な旨案内していたのを小耳に挟み、小走りで出口へと急ぐ。

カウンターでの振り替え交渉

1Fのバゲージクレームのカウンターではまだ3つの窓口が空いていて、ラッキーなことにまだ2~3人しか並んでいない。待ってるうちにこちらにも続々と人が詰めかけてくる。すぐに順番が来て、受付の女性に相談。振り替え作業自体は専門のオフィスで手配しているのか、わりとスムーズに代替案が出てきた。「今日乗り継ぎではもう帰れないわ。明日の直行便も満席なの。」と最初に宣告があり、提示された案は、今夜はヘルシンキの空港近くのホテルに泊まり、明朝ドイツのフランクフルトまでフィンエアー、さらにLOTポーランド航空に乗り継いでワルシャワに戻るというもの。朝8時にヘルシンキを出発しても到着は正午過ぎ。予想外の事態で会社を半休することになってしまうが、粘って交渉してもいい解決策が出てくる気配もなく、ここは素直に受け入れるほかない。隣で交渉中の中年女性は「明日午前中に病院を予約してるのよ!」と息巻いていたが、AYの責任だし気持ちはわかるものの、こんな状況だとプライベートジェットを飛ばすくらいしか策はなく、早々とあきらめるが吉。フランクフルトではなくミュンヘン経由を打診されている人たちもいたけれど、いずれにせよ「∠」の字形にポーランドを通り過ぎて、ドイツから戻ってくるという非効率なルートではある。

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代替便用のeチケット*2、HEL-FRA間の搭乗券、それに夕食と朝食付きを明示したホテルのバウチャー。宿泊先には、Holiday Inn Helsinki - Vantaa Airportが指定されていた*3。FRA-WAW間の搭乗券は、フランクフルトのチェックインカウンターで受け取ってほしいとの指示。

www.ihg.com

ホリデイインホテルへ

手荷物をピックアップし、さきほどの女性の案内にしたがって、ヴァンター空港近隣のエアポートホテルを巡回するバスの停留所へ移動。ワルシャワへ行くはずだったかなりの数の人がホリデイインへ向かうようで、巡回バスが来るのを待っている間にも人がどんどん押し寄せる。もちろんバスも満員、押し合いへし合いだった。「これはチェックインにもかなり時間がかかるな」と嫌な予感がした私は、申し訳ないと思いつつ出口扉付近にスペースを陣取って、バスがホテル前に着くやいなや小走りでフロントへと向かってチェックインの手続きを依頼する。

足止めをくらい泊まることを余儀なくされたこの手の人たちの対応にフロントも慣れているのか、チェックインもスムーズで、夕食券と朝食券を一緒に手渡される。アサインされた部屋はツインルームの駐車場ビューだけれど、数時間のエアポートホテルに贅沢を求めても仕方がない。荷物を置いてすぐに1階のレストランへ。フロアスタッフも2人だけでてんてこ舞いの様子、注文を受けてもらうだけでもかなり待たされた。夕食券を持参の人専用のメニューがあるらしく、選択肢はなし。飲み物も有料。さらに結構長い時間が経って出てきた料理は、豚肉のカレーソース煮込みとライス&温野菜添えのワンプレートで、無料だと思えば十分満足。食べ終わって出る頃には、レストランの入口も夕食券を持った人たちで既に長蛇の列になっていた。

部屋に戻って、事情説明と半休を取る旨会社の上司にメールを送信したついでに、フランクフルト発のLO便のオンラインチェックイン。web上で座席の事前指定と、スターアライアンスなのでANAマイレージ番号に書き換える。ホテルのサウナはまだ開いていたけれど、もう23時。疲れが限界に達したこともあって寝る。zzz…。

フランクフルトでまたもや遅延

翌朝は6時起き。朝食券をもらっていたけれど、ギリギリまで寝ていたかったので朝食はパス。ロビーでオレンジジュースだけ飲み干して、急ぎ空港への巡回バスに飛び乗った。あとは決められた通り粛々と家に帰るだけ。ヘルシンキからフランクフルトまでは何事もなく順調。ラバトリー近くで会話したクルーは昨晩のワルシャワ線が欠航になったことも知っていて、この便にも乗り継いでワルシャワまで行く人がたくさん乗っているのだと教えてくれる。

この行程での最大の難関は、世界有数の巨大ターミナル、フランクフルト空港での乗り継ぎ。ワンワールドフィンエアーが到着するのは、規模の小さなターミナル2。かたやスターアライアンスLOTポーランド航空が出発するのはターミナル1。ターミナル間は歩いていける距離とは言えず、Sky Lineと呼ばれる無人運転シャトルか巡回バスに乗って移動しなければならない。シェンゲン圏なので出入国審査が不要とはいえ、セキュリティチェックもあるし、1時間半の乗り継ぎ時間は少しばかりタイトで不安だった。

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数分の遅れでフランクフルト空港に到着。10年ぶりくらいに降り立ったターミナル2は勝手が分からず、Sky Lineの乗り場を探すのにも時間がかかりそうで、到着ロビーから出て見つけた巡回バスに飛び乗る。この時点でLO便の出発までもう1時間を切っている。ターミナル1の出発フロアに飛び込むと、フランクフルト空港の名物、パタパタ式の出発案内ボードがふと目に入った。《LO382 時間変更》…1時間10分の遅延になっている。緊張が解けて、へなへなと座り込みたい気分。それと同時にフライトを登録していた「CheckMyTrip」のアプリからもディレイのアラートが携帯に表示された。

https://www.checkmytrip.com/www.checkmytrip.com

ルフトハンザが代行するLOTのカウンターでチェックインの手続き。eチケットに加えてバゲージクレームタグも提示するよう求められ、スーツケースが確実に積み込まれるようシステムに登録してくれた。アライアンスが違うこともあって、手動で登録しないと情報がうまく共有できないよう。結局1時間半くらいぶらぶらして暇をつぶした後に搭乗。半休で間に合うつもりが、会社には15時前に着く始末だった。

「EU 261」の補償を受けるには?

もしヨーロッパ旅行で飛行機の到着が長時間遅れたりフライトがキャンセルになってしまった場合、「EU規則 261/2004」という決まりに基づいて航空会社からホテルを手配してもらったり、金銭による補償を受けられる可能性がある。対象になるかどうかは、ざっくり言うと「目的地までどのくらい距離があって、かつ何時間以上出発/到着が遅れたか」 *4で決まる。

eumag.jp
http://www.lufthansa.com/cmn/ja/passenger-rightswww.lufthansa.com

日本語でのリファレンスはまだ少ないけれど、たとえば駐日欧州連合代表部やルフトハンザ航空の日本語Webサイトにある案内が参考になる。しかも、これはLH便だけに適用される社内規定や約款ではなく、拘束力があるれっきとした「法律」なので、EU圏で営業する航空会社や、JAL/ANAのような非EU所属でもEU圏を出発するフライトであれば、基本的にはすべての航空会社に適用される決まりがある。たとえLCCで5ユーロのチケットを買っても、正当な理由と認められればこの規則に基づいた対応を要求できる(渋られたり、対象外だと突っぱねられる可能性はあるけど)。こういう点、EUは消費者保護の仕組みがとてもしっかりしている。

気を付けておいた方がいいのは、フライトの遅延やキャンセルの理由によっては補償の対象外になるということ。大雪や強風のような悪天候や第三者のストライキなど、不可抗力とみなされる理由では補償が下りない。去年の3月、エールフランスでパリに向かおうとしたとき、パイロットが食中毒にかかり半日出発が遅れた」というケースに遭遇。同じステップで補償申請をしたところ「例外的な状況」と扱われ認められなかった。今回のような機材不良だと、航空会社責任となるので申請する権利が認められる。他にもいろいろ制限事項があるので熟読が必要。

補償を受けるまでのステップ

EUのwebサイトから書式をダウンロードして郵送する方法もあるけれど、大手の航空会社だとたいていクレーム専用のフォームがあるので、「EU 261」に基づいた補償申請をすることと、航空券番号やリファレンス番号などの詳細を記入して返事を待つことになる。受理番号が記された自動返信は返ってきたものの、1週間待っても音沙汰がない。業を煮やした私はもう一度問い合わせをする。フィンエアーの場合はチャットやfacebooktwitterカスタマーサービスの連絡先があって質問を受け付けてくれる。今回はfacebookメッセンジャーでコンタクトしたところ、補償手続きの担当部署に照会してもらい、「なぜか回答不要の意見用のフォルダに振り分けられてたよ、ごめんなさい。」との返事が来て拍子抜け。

その後はweb上で専用のフォームで交渉のやりとりを続ける。先方からのメッセージには、フライトがキャンセルになったことの謝罪と、今回のキャンセルは補償の対象になること。そして受けられる補償の選択肢は2つ。HEL-WAW線の場合、「250 eurの現金」か、フィンエアーのみで使える1年間有効の「350 eurのバウチャー」

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今後もフィンランドに旅行する計画はあるので、350 eurのバウチャーを選択。すぐにメールでコードが記載されたバウチャーが送られてきた。ユーロ圏に住んでいる人であればwebで航空券を購入したときに割引として差し引くことができるし、ユーロ圏に住んでない人でも、フィンエアーのカスタマーケアに電話すればバウチャーを使って航空券を購入することができる。ユーロ圏に住んでいない私は半年後、バウチャーを使うことに決めて、フィンエアーに電話をかけた。電話越しで番号や氏名、旅程などの予約情報を伝えるのは面倒だけれど、聞き取りやすいゆっくりとした英語を話すコールセンターの男性は、こちらのぎこちない発音も意に介せずサクサクと処理してくれ、無事に航空券を買うことができた。

まとめ

日本からの海外旅行者の多くは、旅行傷害保険に加入していると思うので、契約内容によってはそれを使って補償を受けることもできる。ただ、クレジットカード付属の保険だと航空機遅延については契約の対象外になっているケースもあったりする。あまり航空会社は大っぴらには告知しないけれど(告知の義務はあって、自動チェックイン機でもそうした注意書きが表示されたりする)、がっかりする前に、こんな制度が適用されるかもしれないことを頭の片隅に入れておいても損はないかなと思う。なお、旅行保険に加入している人でも申請できるのはもちろんのこと。

[Visited on: 2016/07/18-19]
[Published on: 2017/03/16]
[Revised on: 2017/03/18]

*1:両翼に付いている空気抵抗を制御する部品のこと。

*2:とはいえボーディングパスの用紙に印刷してあるので、全然それっぽく見えない。

*3:以前日本線のクルーと話す機会があったとき、「私たち、ヘルシンキではホリデイインに泊まるんですよ。」と言っていたのを思い出した。AYクルー御用達なのだろうか。

*4:ルフトハンザのwebサイトを見ると「出発が何時間遅れたか」と書いてあるけど、これはEU発の視点で書いてあるからだと思う。(2017/03/18追記)